「以前は総会の後に株主懇談会が開かれることがあった」と過去形で書きたくなるくらいに、ここ数年で株主懇談会は激減してしまった。今や完全に絶滅危惧種である。もちろん後述するとおり廃止されるにはそれなりの理由があるのだが、それにしても1社が止めると、われもわれもと追随する自主性のなさはどうかと思う。
株主懇談会の形式はいわゆる立食のパーティーがほとんどだが、中には弁当や軽食のパックを配るやり方もある。アルコールは出す場合と出さない場合があるが、ややノンアルコールの方が多いかという感じ。最大の問題点は、懇談会といいながら飲食に忙しくて、なかなか同席している会社側の役員や幹部職員と「懇談」する余裕がないということ。
そもそも一時株主懇談会がブームになったのは、開かれた株主総会ということがいわれ、会社関係者以外の一般株主の出席が奨励されたとき、出席人数が多いほどいい総会だという勘違いが広まり、言い方は悪いが手っ取り早く「餌で釣」って人集めしようとしたからではないか。事実、懇談会のおかげで、はるかに株主数の多い同業大手より総会出席者数が多いことを自慢するような社長もいた。しかし重要なのは単なる数ではなく、意識の高い株主が出席して内容のある討論が行われるか否かであることはいうまでもない。というわけで、単なる人集めの手段でしかないような株主懇談会は下火になってきたものと思われる。
ただ廃止の直接のきっかけとして一部株主のあまりにもひどいマナーの悪さがあったことも否定できない。某外食産業の総会で懇談会を開かない理由に関する質問に対して、以前開催したとき持参した水筒にワインを入れ、弁当箱に料理を詰めて持ち帰った人がいたからという回答を聞いて唖然としたが、考えてみると金城もそれに近い光景を目撃したことがある。例えば大勢の人が列を作って待っているのに、大皿の料理を全部自分の皿に移して持ち去ったり、弁当を積み上げて自由に取れるようにしてあったら一人で10個ほども抱えていったり等々である。
もっとも悪いのは必ずしも株主だけではない。会社側が出席人数に対して十分な広さの会場と、十分な量の飲み物、食べ物を用意していたかというと、はなはだ疑問なケースも少なくないからだ。某文具会社の総会では、終了近くなると出席者が立ち上がってぞろぞろと出口の方へ移動を開始する。なにごとかと思ったら閉会宣言と同時に一斉に懇親会場めがけて全速力でダッシュ。さもないとと口に入るものは何ひとつ残っていないのでありました。
とはいうものの会社側と株主側が総会とは違うくつろいだ雰囲気の中で企業の諸問題について語り合うことにはやはりそれなりの意味がある。いたずらに料理の豪華さを競う必要は無く、もっと気軽に発言できる場を設けることはできないだろうか。
最近のコメント